重要なお知らせ
リベルサスは日本では2型糖尿病の治療薬として承認されており、ダイエット(肥満症治療)を目的とした服用は適応外となります。
適応外使用の場合、医薬品副作用被害救済制度の対象外となる可能性があります。[1]
[1] 日本糖尿病学会「GLP-1受容体作動薬の適応外使用に関する見解」(2023年11月)
リベルサスとは?基本的な知識
リベルサスは、有効成分「セマグルチド」を含む経口薬で、日本では2型糖尿病の治療薬として承認されています。
セマグルチドは、私たちの体内で自然に作られる「GLP-1」というホルモンと似た働きをする成分です。
GLP-1は、食事をしたときに腸から分泌されるホルモンで、以下のような働きがあります。
- 血糖値が高い時に膵臓からインスリンが出るのを助ける
- 血糖値を上げる別のホルモン(グルカゴン)が出るのを抑える
- 胃のなかの食べ物が腸に移動するスピードをゆっくりにする
- 満腹感を感じやすくする【2】
[2] PMDA リベルサス錠 添付文書(2025年改訂版)
リベルサスは、このGLP-1と同じような働きをすることで、血糖値を下げる効果を発揮します。
この過程で、食欲が抑えられたり、満腹感を感じやすくなったりすることから、体重が減少する可能性があります。
日本での承認状況と適応外使用について
日本において、リベルサスは2型糖尿病の治療薬としてのみ承認されています。
ダイエットや肥満症の治療を目的とした服用は、適応外使用にあたります。
日本糖尿病学会は2023年11月、GLP-1受容体作動薬(リベルサスを含む)について、美容目的やダイエット目的での適応外使用を控えるよう注意を呼びかけています。
その背景には、糖尿病患者さんへの必要な薬の供給に影響が出る懸念や、適応外使用による安全性の問題があります。[1]
※「リベルサスと同成分のウゴービは肥満症の治療薬として国内で承認されています。」
リベルサスの体重減少効果:どのくらい痩せる?
2型糖尿病患者データ
PIONEER 1試験という大規模な研究では、26週間(約6か月)リベルサスを服用した2型糖尿病を持つ患者で、以下のような結果が報告されています。[4]
| 用量 | 期間 | 平均体重減少 | 対象 |
| 14mg | 26週間 | 約-2.6kg前後 | 2型糖尿病患者 |
[4] Aroda VR, et al. Diabetes Care. 2019;42(9):1724-1732.
また、日本人の2型糖尿病を持つ患者を対象とした研究でも、26週時点で14mg服用時に約-2.4~-3.1kg(体重の約-3.7~-4.7%)の減少が報告されています。[5]
[5] Inagaki N, et al. Diabetes Obes Metab. 2020-2021相当のデータ
ただし、これらは糖尿病治療を目的とした服用でのデータであり、減量を目的として使用した場合の効果とは異なる可能性があることに注意が必要です。
高用量での研究データ(未承認用量)
海外では、より高い用量でのダイエット効果を調べた研究もあります。
OASIS-1試験では、糖尿病ではない肥満または過体重の方を対象に、50mg(日本では未承認の用量)を68週間服用した結果、平均で体重の約-15.1%の減少が見られました(プラセボ群では-2.4%)。[6]
[6] NEJM関連・Novo Nordisk社データ要約, 2023
効果には個人差があります
体重減少の効果は、もともとの体重、食事や運動の習慣、体質などによって大きく異なります。
また、リベルサスは血糖値を下げることが主な目的のお薬であり、体重減少はあくまで副次的な作用です。「必ず痩せるお薬」ではなく、食事療法や運動療法と組み合わせることが基本となります。
リベルサスの正しい飲み方
服用方法の基本ルール
リベルサスは、正しく服用しないと十分な効果が得られないことがあります。以下の3つのルールを必ず守ってください。[2]
| ルール | 詳細 |
| ①起床時(空腹時)に服用 | 朝起きてすぐ、胃が空っぽの状態で服用します。前日の夕食から時間が経っていることが大切です。 |
| ②水の量は120mL以下 | コップ半分程度(約120mL以下)の水で飲んでください。水が多すぎるとお薬の吸収が悪くなります。 |
| ③服用後30分は何も食べない ・飲まない | お薬を飲んでから30分間は、食事も飲み物も他のお薬も口にしないでください。水やお茶、コーヒーも避けてください。 |
[2] PMDA リベルサス錠 添付文書(2025年改訂版)
やってはいけないこと
- 錠剤を割る、砕く、噛むこと(必ず丸ごと飲んでください)
- お茶、コーヒー、ジュースで飲むこと(必ず水で飲んでください)
- 食後に飲むこと(必ず空腹時に飲んでください)
- 錠剤を2錠飲むこと(用量は医師の指示通りにしてください)
用量の増やし方
リベルサスは、副作用を減らすために、段階的に用量を増やしていきます。一般的には以下のようなスケジュールで増量します。[2]
最初の4週間は3mgから開始し、その後4週間は7mgに増量、さらに必要に応じて14mgへと段階的に用量を上げていきます。
これは体をお薬に慣れさせ、吐き気などの副作用を軽くするためです。用量の調整は必ず医師の指示に従ってください。
リベルサスの副作用とリスク
よく見られる副作用(消化器症状)
リベルサスで最も多く報告される副作用は、胃腸に関する症状です。PIONEER試験などのデータによると、以下のような症状が見られることがあります。[4]
| 副作用 | 頻度の目安 | 特徴 |
| 吐き気(悪心) | 10~ 程度 | 服用開始初期に多い。多くの場合、継続すると軽くなります。 |
| 下痢 | 10%前後 | 軽度から中等度のことが多い。 |
| 便秘 | 数%~10%程度 | 胃腸の動きがゆっくりになることで起こります。 |
| 腹痛、腹部不快感 | 数%程度 | 症状が強い場合は医師に相談してください。 |
[4] Aroda VR, et al. Diabetes Care. 2019(有害事象データより)
これらの症状は、服用開始の初期に現れることが多く、続けているうちに軽くなることがあります。ただし、症状がつらい場合や長く続く場合は、医師に相談することが大切です。
重大な副作用に注意
頻度は高くありませんが、以下のような重大な副作用が起こる可能性があります。
①急性膵炎
膵臓に急激な炎症が起こる状態です。激しい腹痛や背中の痛み、吐き気、嘔吐などの症状が現れた場合は、すぐに服用を中止し、医療機関を受診してください。[2]
②胆嚢・胆道疾患
GLP-1受容体作動薬の服用により、胆嚢や胆道の病気のリスクが高まる可能性が報告されています。右上腹部の痛み、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)などの症状がある場合は、すぐに医師に相談してください。[7]
[7] JAMA Intern Med 2022(システマティックレビュー)
絶対に使ってはいけない方(禁忌)
以下に当てはまる方は、リベルサスを服用できません。[2][8]
| 禁忌項目 | 理由 |
| 甲状腺髄様癌の既往歴がある方、またはその家族歴がある方 | 動物実験で甲状腺腫瘍のリスクが報告されているため。 |
| 多発性内分泌腫瘍症2型(MEN2)の方 | 同様に甲状腺腫瘍のリスクがあるため。 |
| 妊娠中または妊娠している可能性がある方 | 胎児への安全性が確立されていないため。 |
| 重度の腎機能障害がある方 | 副作用が強く出る可能性があるため。 |
[2] PMDA リベルサス錠 添付文書(2025年改訂版)
[8] FDA Rybelsus Prescribing Information(最新改訂版)
また、授乳中の方、他の糖尿病薬を服用中の方、胃腸の手術を受けたことがある方なども、服用について医師との相談が必要です。
リベルサスを中止した後の体重変化
リベルサスは食欲を抑える作用によって体重減少をサポートしますが、服用を中止すると、その作用もなくなります。
そのため、お薬をやめた後に食欲が戻り、体重が増加する(リバウンドする)可能性があります。
体重を維持するためには、服用中から食事の内容や量、運動習慣を見直し、お薬に頼らない生活習慣を身につけることが重要です。
医師と相談しながら、中止後の体重管理計画を立てることをお勧めします。
個人輸入のリスクと医療機関で処方してもらう重要性
個人輸入は絶対に避けてください
インターネット上では、海外からリベルサスを個人輸入できるサイトが存在しますが、これには以下のような深刻なリスクがあります。
- 偽造医薬品が混入している可能性がある
- 品質や保管状態が保証されていない
- 健康被害が起きても医薬品副作用被害救済制度の対象外となる
- 医師の診察や検査なしに服用するため、重大な副作用に気づけない
リベルサスは医師の処方が必要な医療用医薬品です。必ず医療機関を受診し、医師の診察と処方を受けてください。現在では、オンライン診療を利用することで、通院の負担を減らしながら、お薬を処方してもらうことも可能です。
リベルサスの費用について
リベルサスをダイエット目的で服用する場合、健康保険は適用されず、全額自己負担(自費診療)となります。
医療機関によって費用は異なりますが、クリニックフォアでは以下のような費用がかかります。
| 項目 | 費用の目安(自費診療) |
| 初診料 ・診察料 | 0円~1,650円程度 |
| リベルサス 3mg(30日分) | 8,027円~11,000円程度 |
| リベルサス 7mg(30日分) | 15,942円~22,000円程度 |
| リベルサス 14mg(30日分) | 25,579円~36,300円程度 |
継続的な服用が必要になるため、経済的な負担も考慮する必要があります。医療機関によっては、定期的な血液検査などの費用も別途かかる場合があります。
受診前のセルフチェック
リベルサスの服用を検討されている方は、以下の項目をチェックしてから医師に相談しましょう。
| チェック項目 | 確認内容 |
| 現在のBMI | BMI = 体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m) ※BMIが18.5未満に該当する方には処方できません |
| 合併症の有無 | 高血圧、脂質異常症、睡眠時無呼吸症候群などがあるか |
| 妊娠の可能性 | 妊娠中、妊娠の可能性、授乳中ではないか |
| 甲状腺の病歴 | 自分や家族に甲状腺髄様癌の既往はないか |
| 過去の病気 | 膵炎、胆嚢疾患、腎臓病などの既往はないか |
| 現在の治療 | 他に服用している薬はあるか(特に糖尿病薬) |
これらの情報を整理してから受診すると、医師との相談がスムーズになります。
まとめ:安全な肥満治療のために
リベルサスは2型糖尿病の治療薬として効果が認められていますが、ダイエット目的での服用は適応外となります。もし肥満症の治療を考えておられる場合は、まずウゴービなどの正規の肥満症治療薬について医師に相談することをお勧めします。また、どのようなお薬を使う場合でも、食事療法や運動療法と組み合わせることが基本となります。
安全に治療を受けるために
- 必ず医療機関を受診し、医師の診察を受けること
- 適応外使用であることを理解した上で服用すること
- 定期的な検査やフォローアップを受けること
- 副作用が現れたらすぐに医師に相談すること
- 個人輸入は絶対に避けること
オンライン診療を利用すれば、通院の負担を減らしながら、医師の診察や処方を受けることができます。まずは医師に相談し、ご自身に合った安全な治療方法を見つけてください。
