マンジャロでうつが悪化する?
「マンジャロを使うとうつになる」という情報を目にして、不安を感じている方もいるかもしれません。
現時点では、添付文書(製薬会社が作成するお薬の公式な説明書)にうつ病は副作用として記載されていません。
また、FDAも予備的評価では因果関係を示す証拠は見つかっていないとしていますが、小さなリスクを完全に排除することはできないとして調査を継続しています。
ここでは、公式な情報源に基づいて、マンジャロとうつの関係について解説します。
添付文書にうつ病は副作用として記載されていない
添付文書を確認すると、マンジャロの精神神経系の副作用として記載されているのは「味覚不全、異常感覚」のみです[1]。
うつ病や抑うつ状態は、副作用の項目には含まれていません。
添付文書には臨床試験で確認された副作用が記載されており、うつ病が記載されていないということは、因果関係が認められる副作用として報告されなかったことを意味するでしょう。
ただし、個人の体験として気分の変化を感じる方がいることも事実であり、気になる症状があれば医師に相談することが大切です。
FDAの見解は「調査継続中だが、現時点で証拠は見つかっていない」
米国FDA(食品医薬品局)は、GLP-1受容体作動薬と自殺念慮や精神症状の関連性について調査を行っています。
2024年1月に発表された見解では、「初期評価において、これらのお薬の使用が自殺念慮や自殺行為を引き起こすという証拠は見つかっていない」と報告されています[4]。
ただし、肥満症治療薬として承認されたGLP-1受容体作動薬には、過去に「自殺念慮や自殺行為の報告」があったため、処方情報に“注意喚起がある”薬もあります。現在も、FDAなどの機関で安全性の評価が継続されています。FDAは、患者に対して新たなうつ症状や気分の変化があれば医療従事者に報告するよう推奨しています。
日本イーライリリー株式会社の公式情報はどうなの?
日本イーライリリー株式会社の公式情報によると、国内第3相試験では大うつ病性障害や自殺念慮が「注目すべき有害事象」として監視されていました[3]。
糖尿病患者はうつ病の有病率が高い可能性があり、お薬との因果関係ではなく、もともとのリスク因子が影響している可能性も考えられます。
臨床試験の結果からは、マンジャロが直接的にうつ病を引き起こすという明確なエビデンスは示されていないでしょう。
マンジャロでうつが「改善する」可能性を示す研究
マンジャロとうつの関係については、悪化するどころか「改善する可能性がある」という研究結果も報告されています。
大規模な医療記録の分析や症例報告において、GLP-1受容体作動薬の使用者でうつ病や不安障害のリスクが低下したというデータが出てきています。
これらの研究はまだ因果関係を証明するものではありませんが、興味深い結果として注目されているでしょう。
ここでは、うつ症状の改善を示唆する研究について紹介します。
300万人以上の医療記録分析でうつ病リスク65%低下
米国の大手医療記録会社Epic Researchが実施した大規模な分析では、GLP-1受容体作動薬とうつ病リスクの関連が調査されました[6]。
300万人以上の糖尿病患者と約93万人の非糖尿病患者の医療記録を分析した結果、興味深いデータが報告されている状況です。
糖尿病患者でチルゼパチド(マンジャロの有効成分)を服用している人は、GLP-1薬を服用していない人と比較して、うつ病と診断される可能性が65%低かったとされています。
また、不安障害と診断される可能性も60%低いという結果でした。
チルゼパチドは調査対象となったGLP-1薬の中で、うつ病・不安障害の両方のリスク低下において最も大きな効果と関連していたと報告されています。
マンジャロ使用中に気分が落ち込む可能性のある原因
マンジャロがうつ病を直接引き起こすエビデンスはありませんが、使用中に気分の落ち込みを経験する方がいる可能性も無視はできません。
これらの症状は、お薬の直接的な作用ではなく、間接的な要因によって引き起こされている可能性があります。
原因を理解しておくことで、適切な対処ができるようになるでしょう。
ここでは、マンジャロ使用中に気分が変化する可能性のある要因について解説します。
血糖値の変動が気分に影響することがある
マンジャロは血糖値をコントロールする作用があるお薬です。
血糖値が急激に変動すると、イライラや不安、気分の落ち込みなどの症状が現れることがあります。
特に食事量が極端に減った場合や、食事のタイミングが不規則になった場合には、低血糖になる可能性もあるでしょう。
血糖値の変動による気分の波は、お薬の直接的な副作用ではなく、身体の代謝状態の変化によるものと考えられます。
規則正しい食事を心がけ、極端な食事制限を避けることが大切です。
消化器症状や食欲低下による心理的ストレス
マンジャロの代表的な副作用として、悪心、嘔吐、下痢、便秘などの消化器症状があります[1]。
これらの症状が続くと、食事を楽しめなくなったり、日常生活に支障が出たりして、心理的なストレスを感じることがあるでしょう。
また、食欲が大幅に低下することで、「食べる楽しみ」が失われたと感じる方もいます。
食事は多くの人にとって楽しみや社交の場でもあるため、それが制限されることで気分に影響が出る可能性があります。
消化器症状がつらい場合は、医師に相談して用量の調整を検討してもらうことが大切です。
精神的な不調を感じたときの対処法
マンジャロの使用中に気分の落ち込みや精神的な不調を感じた場合、一人で抱え込まないことが大切です。
適切な対処を行うことで、症状の改善につながる可能性があります。
自己判断でお薬を中止するのではなく、まずは医療機関に相談することをおすすめします。
ここでは、精神的な不調を感じたときの具体的な対処法を紹介します。
まずは処方医に相談する
気分の落ち込みや精神的な変化を感じた場合、最初に行うべきことは処方医への相談です。
医師はあなたの状態を総合的に評価し、お薬の用量調整や休薬の必要性を判断します。
気分の変化がお薬によるものなのか、他の要因によるものなのかを見極めることが、まずは相談してみましょう。
しっかり症状を伝えることで、適切なサポートを受けられる可能性が高まります。
オンライン診療を利用している場合でも、メッセージや電話で相談できるクリニックが多いため、気になることがあれば早めに連絡しましょう。
※クリニックフォアでは、診療行為にあたるものはチャットでのご対応が難しく、ご相談内容によっては診察を受けていただく場合がございます。
生活習慣を見直す
精神的な不調は、生活習慣の乱れが影響していることもあります。
睡眠不足や不規則な食事、運動不足は気分に悪影響を与える可能性があるでしょう。
規則正しい生活リズムを心がけ、十分な睡眠時間を確保することが大切です。
また、適度な運動は気分を改善する効果があることが知られています。
ウォーキングやストレッチなど、無理のない範囲で身体を動かす習慣を取り入れてみてください。
必要に応じて専門家への相談を検討する
気分の落ち込みが続く場合や、日常生活に支障が出ている場合は、心療内科や精神科への相談を検討しましょう。
マンジャロを処方している医師とは別に、メンタルヘルスの専門家に診てもらうことで、より適切なサポートを受けられる可能性があります。
カウンセリングを受けることも有効な選択肢である場合もあります。精神的な不調は早めに対処することで、悪化を防ぐことができるでしょう。
一人で抱え込まず、周囲のサポートを活用することが回復への近道です。
マンジャロ使用前に確認しておきたい注意点
マンジャロを安心して使用するためには、事前にいくつかの注意点を確認しておくことが大切です。
特に精神的な健康に不安がある方は、医師にしっかりと情報を伝えておく必要があります。
適切な情報共有を行うことで、より安心してお薬を使用できるようになるでしょう。
ここでは、マンジャロ使用前に確認しておきたいポイントを解説します。
精神疾患の既往がある方は事前に医師へ伝える
うつ病や不安障害などの精神疾患の既往がある方は、必ず事前に医師へ伝えてください。
過去に精神科や心療内科で治療を受けたことがある場合も、その情報を共有することが重要です。
医師はその情報をもとに、お薬の処方が適切かどうかを判断することができます。
現在、精神科のお薬を服用している場合は、相互作用の可能性についても確認しておきましょう。
治療中の疾患について医師に伝えることが、安全な治療につながります。
気分の変化があれば早めに報告する
マンジャロの使用中に気分の変化を感じた場合は、些細なことでも医師に報告することが大切です。
FDAも、新たなうつ症状や気分・行動の変化があれば医療従事者に報告するよう推奨しています[4]。
早期に報告することで、問題が大きくなる前に対処できる可能性があるでしょう。
「こんなことで相談していいのかな」と不安になる場合もあるかもしれませんが、悪化する前に相談しておくことが大事です。マンジャロを自己判断で中止せず医師に相談する
気分の落ち込みを感じた場合、自己判断でマンジャロを中止することは避けてまずは医療機関に相談しましょう。
FDAも「医療専門家に相談せずにこれらのお薬を中止しないでください。中止すると症状が悪化する可能性があります」と注意喚起しています[4]。
急にお薬を中止すると、リバウンドしやすくなる可能性もあります。気になる症状がある場合は、まず医師に相談して、継続するか中止するかの判断を仰ぎましょう。
医師と相談しながら、安全にお薬を使用することが大切です。
マンジャロとうつに関するよくある質問
マンジャロでうつ病になることはありますか?
現時点では、マンジャロがうつ病を直接引き起こすという明確な証拠は見つかっていません。
ただし、FDAは「小さなリスクを完全に排除することはできない」として調査を継続しています[4]。
気分の変化を感じる場合は、早めに医師に相談することが大切です。
うつ病の治療中でもマンジャロを使用できますか?
うつ病の治療中の方がマンジャロを使用できるかどうかは、医師の判断によります。
現在服用しているお薬や症状の状態を医師に伝えた上で、使用の可否を判断してもらいましょう。
自己判断で使用を開始せず、必ず医師に相談してください。
※医師の判断によりお薬を処方できない場合があります。
マンジャロを使用中に気分が落ち込んだらどうすればいいですか?
気分の落ち込みを感じた場合は、まず処方医に相談してください。血糖値の変動や消化器症状など、間接的な要因が影響している可能性もあります。
自己判断でお薬を中止せず、医師と相談しながら対処法を検討することが大切です。
マンジャロとうつに関するまとめ
マンジャロがうつ病を引き起こすという明確な証拠は、現時点では見つかっていません。
ただし、FDAは「小さなリスクを完全に排除することはできない」として調査を継続しており、完全に否定されているわけではありません。
一方で、大規模な研究ではチルゼパチド使用者でうつ病リスクが65%低下したという報告もあり、むしろ改善する可能性も示唆されています。
使用中に気分の変化を感じる場合は、血糖変動や消化器症状、心理的要因など間接的な原因が影響している可能性があるでしょう。
精神疾患の既往がある方は事前に医師へ伝え、気分の変化があれば早めに報告することが大切です。
自己判断でお薬を中止せず、医師と相談しながら安全に使用してください。
マンジャロの使用に不安がある方は、まずは医師に相談してみてはいかがでしょうか。
