マンジャロで筋肉痛が起きるのは副作用?
マンジャロを使用中に筋肉痛を感じると、「副作用かもしれない」と心配になる方も多いでしょう。
しかし、筋肉痛の多くは薬の直接的な副作用ではなく、食欲抑制に伴う栄養状態の変化が原因と考えられています。
筋肉痛は添付文書に記載された主な副作用ではない
日本イーライリリー株式会社「マンジャロ皮下注アテオス添付文書」の中で記載されている主な副作用は、消化器系の症状が中心です[1]。
具体的には、悪心(吐き気)、便秘、下痢、腹痛、食欲減退などが報告されています。筋肉痛については、添付文書の主な副作用一覧には記載されていません。
マンジャロが作用する部位は脳の摂食中枢や膵臓、消化管であり、筋肉に直接作用するお薬ではないためです。
そのため、筋肉痛を感じたとしても、お薬の直接的な副作用である可能性は低いと考えられています。
筋肉痛は食欲抑制に伴う「間接的な反応」
マンジャロ使用中に感じる筋肉痛の多くは、お薬の作用によって食事量が減少したことに伴う「間接的な反応」と考えられています。
マンジャロは食欲抑制効果を持つため、摂取カロリーが大幅に減少することがあります。
この状態が続くと、筋肉の維持に必要なタンパク質や水分が不足しやすくなるのです。
体内のエネルギーが不足すると、生命維持に必要なアミノ酸を確保するために筋肉組織が分解されることがあります。
この一連の流れが、筋肉の痛みや張りとして発生する可能性があります。
マンジャロで筋肉痛が起きる3つの原因
マンジャロ使用中に筋肉痛が起きる原因は、主に3つ考えられます。いずれもお薬の直接的な作用ではなく、食欲抑制に伴う体内環境の変化が関係しています。
原因を正しく理解することで、適切な対策をすることができるでしょう。
以下でそれぞれの原因を詳しく解説します。
タンパク質不足による筋肉分解
マンジャロの食欲抑制効果により、食事量が減少するとタンパク質の摂取量も自然と減ってしまいます。
タンパク質は筋肉の主成分であり、合成と分解が常に行われている栄養素です。
摂取量が不足すると分解が合成を上回り、筋肉量が減少していきます。
体はエネルギー不足の状態になると、生命維持に必要なアミノ酸を確保するために自らの筋肉組織を分解し始めます。
この現象により、筋肉の痛みや張り、だるさを感じやすくなるのです。
ダイエット中は特にタンパク質の必要量が増加するため、意識的な摂取が重要になります。
脱水・電解質バランスの乱れ
食事量が減ると、食事に含まれる水分の摂取量も同時に減少します。知らず知らずのうちに脱水状態に陥りやすくなる可能性があるため注意が必要です。
水分が不足すると、筋肉の収縮や神経伝達に必要なミネラル(ナトリウム、カリウム、マグネシウムなど)のバランスが崩れやすくなります。
電解質バランスの乱れは、筋肉のこわばりや痛み、こむら返り(足がつる症状)の原因となることがあります。
特にふくらはぎや太ももなどの大きな筋肉は影響を受けやすいとされています。
脱水状態では血流も悪化するため、筋肉への酸素や栄養素の供給が滞り、疲労感が強まることもあります。
運動量の増加による通常の筋肉痛
マンジャロによる減量が進むと、体が軽くなって活動的になる方もいるでしょう。
これまで運動習慣がなかった方が急にウォーキングや筋トレを始めると、筋肉が慣れていない刺激を受けて筋肉痛が起こることがあります。
これは「遅発性筋肉痛」と呼ばれるもので、筋繊維が微細に損傷し、それを修復する過程で生じる自然な反応です。
これらの筋肉痛は、体が変化に適応している証でもあり、ポジティブなサインと捉えることもできます。
ただし、マンジャロ使用中は食欲抑制効果によって栄養や水分が不足しがちなため、通常の筋肉痛でも回復が遅れたりする可能性も否定できません。
運動量を増やす際は、栄養補給と休養をセットで考えることが大切です。
マンジャロの筋肉痛を予防・改善する方法
マンジャロ使用中の筋肉痛は、適切な栄養管理と生活習慣の見直しで予防・改善できることが多いです。
「副作用かもしれない」と不安になって投与を自己中断する前に、まずは以下の対策を試してみてください。
栄養・水分・運動の3つの観点から、具体的な方法を解説します。
タンパク質を意識して摂取する
減量中はエネルギー摂取が少なくなるため、体脂肪だけでなく筋肉量も低下しやすくなります。
そのため、筋肉量をできるだけ維持しながら体重を落とすには、十分な量のたんぱく質を意識して摂取することが重要です
一度の食事で吸収できるタンパク質量には限界があるため、朝・昼・夕に分けて摂取するのが効率的でしょう。
高タンパク・低脂質の食品として、鶏むね肉、ささみ、魚、卵、豆腐、納豆などがおすすめです。
食欲がなく食事から十分に摂取できない場合は、プロテインパウダーやプロテインバーを活用することも有効な方法です。
水分・電解質をこまめに補給する
1日に1.5〜2リットルの水を、喉の渇きを感じる前にこまめに飲む習慣をつけましょう。
食事量が減っている時期は、食事からの水分摂取も減少している可能性が高いです。
汗を多くかく日や食事量が極端に少ない日は、経口補水液やスポーツドリンクを適宜利用することも効果的です。
ナトリウム、カリウム、マグネシウムなどのミネラルは、野菜、果物、海藻、味噌汁などからも補給できます。
コーヒーや緑茶に含まれるカフェイン、アルコールには利尿作用があり、かえって脱水を助長する可能性があります。
これらの摂取は控えめにすることをおすすめします。
軽い運動から段階的に始める
運動を始める際は、ウォーキングやストレッチ、軽いヨガなど、関節への負担が少ない運動から始めましょう。
体が慣れてきたら、スクワットや腕立て伏せなど自重を使った筋力トレーニングを取り入れていくのが理想的です。
「週2〜3回、1回30分」など、無理のない範囲で継続できる目標を設定してください。
運動前にはウォームアップ、運動後にはクールダウンのストレッチを行うことで、怪我の予防につながります。
運動後30分以内にタンパク質を補給すると、筋肉の修復が効率的に行われるとされています。
筋肉痛が強い日は無理をせず、休養を取ることも大切です。
マンジャロで筋肉量は減る?筋肉量低下への対策
マンジャロによる体重減少の過程で、「筋肉まで落ちてしまうのでは」と心配される方もいるのではないでしょうか?
体重が減ると同時に筋肉量も減少すると、基礎代謝が低下してリバウンドしやすくなる可能性があります。
ここでは、体重減少と筋肉量の関係、筋肉量低下を防ぐ方法について解説します。
マンジャロによる体重減少と筋肉量の関係
日本人を対象とした臨床試験のデータによると、マンジャロによる体重減少の75〜80%は体脂肪の減少によるものでした[3]。
残りの20〜25%は除脂肪量(筋肉や水分など)の減少と報告されています。
この比率は、一般的な大幅な体重減少で見られる比率とほぼ一致しています。
つまり、マンジャロが特異的に筋肉を減らすわけではないことが示されています。
ただし、体重減少に伴ってある程度の筋肉量低下は避けられないため、対策をすることが重要です。
適切な栄養管理と運動を組み合わせることで、筋肉量の減少を最小限に抑えることができます。
筋肉量低下を抑える方法は?
筋肉量を維持しながら減量するためには、タンパク質の十分な摂取と筋力トレーニングの組み合わせを考えましょう。
筋力トレーニングは、筋肉に刺激を与えることで筋肉の分解を抑制し、維持・向上を促します。
週2〜3回、スクワットや腕立て伏せなどの自重トレーニングから始めるのがおすすめです。
有酸素運動(ウォーキング、ジョギングなど)と筋力トレーニングを組み合わせると、脂肪燃焼と筋肉維持の両方に効果が期待できます。
運動が難しい方は、日常生活の中で階段を使う、歩く距離を増やすなど、活動量を少しずつ増やすことから始めてみてください。
急激なダイエットは筋肉減少のリスクなので注意
短期間で過度な減量を目指すと、筋肉量の減少が加速するリスクがあります。
極端な食事制限を行うと、体はエネルギー不足を補うために筋肉を分解してしまいます。
また、急激なダイエットはリバウンドのリスクも高くなる可能性があるため注意が必要です。
マンジャロはあくまで減量をサポートするお薬であり、短期間での劇的な変化を期待するのは現実的ではありません。
医師の指導のもと、無理のないペースで減量を進めることが、健康的なダイエットの基本です。
マンジャロの筋肉痛で医師に相談すべきタイミング
マンジャロ使用中の筋肉痛について、「このまま様子を見ていいのか」「病院に行くべきか」と迷う方もいるのではないでしょうか?
自己判断で対処を続けるのではなく、適切なタイミングで医師に相談することも大切です。
以下のような状況では、早めに医療機関を受診することをおすすめします。
数日間対策しても改善しない場合
タンパク質や水分を意識的に補給し、十分な休養を取っても、数日間で筋肉痛が改善しない場合は医師に相談しましょう。
栄養不足や脱水が原因であれば、対策を始めてから数日〜1週間程度で症状が軽減することが多いとされています。
それでも改善が見られない場合は、他の原因が隠れている可能性があります。
痛みがむしろ悪化している場合も、放置せずに受診を検討してください。単なる栄養不足や筋疲労の範囲を超えている可能性があるためです。
医師による診察を受けることで、適切な対応を取ることができます。
日常生活に支障をきたす痛みがある場合
痛みが強く、仕事や家事、日常の動作に支障が出ている場合は、我慢せずに医師に相談しましょう。
「歩くのがつらい」「階段の上り下りができない」「腕を上げられない」といった状態は、軽度の筋肉痛とは言えません。
このような強い痛みが続く場合は、単なる筋肉痛ではない可能性があります。
また、筋肉痛だけでなく、しびれや強い脱力感を伴う場合は、神経系の問題が隠れている可能性もあります。
専門家の診断を仰ぐことで、原因を特定し適切な治療を受けることができます。
尿の色の異常や全身症状がある場合
尿の色が赤褐色や濃い茶色、コーラのような色に変化している場合は、直ちに医療機関を受診してください。
これは非常に稀ですが、横紋筋融解症などの別の病気や、急性腎不全につながる可能性がある可能性もある状態です。
また、発熱、強い倦怠感、吐き気、嘔吐といった全身症状を伴う場合も危険信号です。
これらの症状は、筋肉細胞の広範な破壊が起こっている可能性も考えられます。
症状が複数見られる場合は、救急受診も視野に入れた迅速な対応が必要です。自己判断で様子を見ることは避け、すぐに医師の診察を受けましょう。
マンジャロの筋肉痛に関するよくある質問
Q1:マンジャロの筋肉痛はいつまで続きますか?
原因が栄養不足や脱水の場合、タンパク質・水分補給などの対策を始めてから数日〜1週間程度で改善することが多いとされています。
運動による筋肉痛であれば、通常2〜3日で軽快します。
ただし、1週間以上続く場合や悪化する場合は、医師に相談することをおすすめします。
Q2:筋肉痛があるときに市販の鎮痛剤を使ってもいいですか?
アセトアミノフェンなどの市販の解熱鎮痛薬は、一般的に使用可能とされています。
ただし、これはあくまで一時的な対処法であり、長期連用は避けるべきでしょう。
腎機能への影響を考慮し、市販薬を使用する前に医師や薬剤師に相談することをおすすめします。
Q3:筋肉痛を悪化させる食品はありますか?
特定の食品が筋肉痛を直接悪化させるわけではありませんが、タンパク質・水分・ミネラルの不足が問題となります。
アルコールは利尿作用により脱水を助長し、筋肉の回復を遅らせる可能性があるため控えめにしましょう。
高タンパク・高ミネラルのバランスの取れた食事を心がけることが、筋肉痛対策の基本です。
Q4:自己判断でマンジャロの投与を中止してもいいですか?
筋肉痛が気になるからといって、自己判断で急にマンジャロの投与を中止することは推奨されません。
急な中止は、抑制されていた食欲が急激に戻り、リバウンドを引き起こすリスクがあります。
どのような症状であれ、まずは処方した医師に報告し、その指示に従うことが原則です。
マンジャロの筋肉痛に関するまとめ
マンジャロ使用中の筋肉痛は、お薬の直接的な副作用ではなく、栄養不足や脱水に伴う生理的な反応であることが多いです。
主な原因として、タンパク質不足による筋肉分解、水分・電解質バランスの乱れ、運動量増加による通常の筋肉痛の3つが考えられます。
対策として、体重1kgあたり1.2〜1.5gのタンパク質摂取、1日1.5〜2リットルの水分補給、段階的な運動習慣の導入が効果的です。
ただし、尿の色が赤褐色に変化したり、激しい痛みや発熱を伴う場合は、横紋筋融解症の可能性があるため直ちに医療機関を受診してください。
数日間対策しても改善しない場合や、日常生活に支障をきたす痛みがある場合も、医師への相談をおすすめします。
自己判断で投与を中止せず、不安な症状があれば必ず医師に相談するようにしましょう。
正しい知識と対策をもって、安心してマンジャロでの治療を続けてください。
