ALLERGIC RHINITIS

※画像はイメージです。

アレルギー性鼻炎は、日本国民の半数がかかっているともいわれる病気です。アレルギー性鼻炎になるとさまざまな症状に悩まされ、生活の質が下がる場合があります。

しかし、何とか改善したいと思ってはいるものの、どう対処したらよいのかわからず悩んでいる方もいるのではないでしょうか。そこで、アレルギー性鼻炎の原因や主な症状、治療法、対処法などについて解説します。

アレルギー性鼻炎とは?

アレルギー性鼻炎とは、ホコリなどのハウスダストや花粉などのアレルゲン(アレルギーの原因となる物質)に対し、免疫が過剰に反応してしまうことで起こる鼻の炎症のことです。

アレルギー性鼻炎は、症状が続く期間によって、通年性アレルギー性鼻炎と季節性アレルギー性鼻炎の2種類に分類されます。

通年性アレルギー性鼻炎

通年性アレルギー性鼻炎とは、年間通して症状が続くアレルギー性鼻炎のことです。とくにダニが原因で起こることが多いとされており、季節にかかわらず発症するリスクがあります。

季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)

季節性アレルギー性鼻炎とは、花粉の飛散量が増える時期のみ症状が出るアレルギー性鼻炎、つまり花粉症のことです。とくにスギ花粉にアレルギー反応を起こす方が多く、日本全国での有病率は20%を超えるともいわれています。

また、人によっては、通年性アレルギー性鼻炎と季節性アレルギー性鼻炎を併発している場合もあります。

アレルギー性鼻炎の症状

アレルギー性鼻炎を発症すると、さまざまな症状が出る可能性があります。主な症状は、さらさらな水のような鼻水、鼻づまり、くしゃみです。また、頭痛や鼻・喉・目・耳の痒みといった症状が出ることもあります。

命に関わる病気ではありませんが、これらの症状が酷い場合には「仕事や家事に集中できない」、「余暇が楽しめない」、「つらくて眠れない」など生活や仕事の質を著しく低下させてしまいます。

ここでは、アレルギー性鼻炎の代表的な症状についてくわしく解説しますので、該当するものがないかどうかをチェックしてみましょう。

さらさらの鼻水

アレルギー性鼻炎になると、水のような透明でさらさらの鼻水が出る場合があります。鼻水には呼吸で吸い込んだ空気の加湿や、異物をキャッチして排除する役割があります。

そのため、アレルギー性鼻炎になると、侵入してきたアレルゲンを排除しようとして鼻水の分泌が増えるのです。また、くしゃみが出たときの反射で鼻水が分泌されることもあります。

風邪のときの鼻水のように粘り気がなく滴ってくるため、頻繁に鼻をかむことになるでしょう。その結果、鼻のかみすぎで鼻の粘膜が傷つき、出血する場合もあります。

鼻づまり

アレルギー性鼻炎では、鼻づまりが起こることもあります。炎症によって鼻の粘膜が腫れるため、鼻の通りが悪くなるのです。息苦しさが原因で、日常生活に悪影響が出る場合もあります。とくにイライラや集中力の低下、睡眠不足などが起こりやすいとされています。

また、鼻がつまると自然に口呼吸になるため、乾燥した空気を直接体内に取り込んでしまい、感染症にかかるケースもあります。

繰り返すくしゃみ

何度もくしゃみを繰り返すのも、アレルギー性鼻炎のよくある症状です。アレルゲンが鼻の粘膜につくと、アレルギー反応によって「ヒスタミン(食べ物に含まれるヒスチジンという物質が酵素で変換されたもの)」という物質が放出されます。

するとヒスタミンが鼻粘膜の神経を刺激するため、鼻のなかに入り込んだ異物を追い出そうとして、くしゃみが出るという仕組みです。

目のかゆみ

アレルギー性鼻炎に関連して、目の粘膜がアレルゲンに反応し、アレルギー性結膜炎を併発することもあります。その場合、目に炎症が生じて、かゆみを感じる場合があります。

喉のかゆみ

鼻で吸収されなかったアレルゲンが、喉に流れていくことがあります。すると喉でアレルギー反応が起こり、喉のかゆみが出る場合もあります。

頭痛

アレルギー性鼻炎によって頭痛が出る方もいます。鼻の奥にある「副鼻腔」という部分まで炎症が広がり、周辺にある神経を刺激するため痛みを感じるとされています。頭だけでなく、目や頬が痛くなる場合もあります。

アレルギー性鼻炎の重症度チェック

アレルギー性鼻炎の重症度は、鼻づまりの有無や鼻水・くしゃみの頻度などで判断されます。下記の表を参考に、自分の重症度をチェックしてみましょう。

くしゃみまたは鼻水
なし1~5/日6~10/日11~20/日21回以上/日
鼻づまりなし無症状軽症中等症重症最重症
・鼻づまりあり・口呼吸なし軽症軽症中等症重症最重症
・強い鼻づまりあり・ときどき口呼吸あり中等症中等症中等症重症最重症
・非常に強い鼻づまりあり・頻繁に口呼吸あり重症重症重症重症最重症
1日中完全な鼻づまりが続いている最重症最重症最重症最重症最重症

また、アレルギー性鼻炎は、くしゃみと鼻水、鼻づまりのうち、どの症状が強いかによって3タイプに分類されます。

  • くしゃみと鼻水の症状が強い場合:鼻漏(くしゃみ・鼻水)型
  • 鼻づまりが強い場合:鼻閉(鼻づまり)型
  • くしゃみ・鼻水・鼻づまりが同程度の場合:充全型

適切に対処するためにも、自分の症状がどのタイプに該当するかも把握しておきましょう。

アレルギー性鼻炎が起こるメカニズム

アレルギー性鼻炎はアレルギー疾患の一つであり、アレルギーの原因物質にさらされることで、人間の体に備わっている免疫が、本来無害であるはずのものに過剰に反応して起こります。

アレルギー性鼻炎の主な原因物質は、ハウスダストや花粉などです。空気中には、ハウスダストや花粉などのアレルゲン(アレルギー症状を引き起こす原因物質)が浮遊しています。呼吸によってそれらのアレルゲンを吸い込み、鼻の粘膜にくっつくと、体内で抗体が生成されます。

抗体とは、体内に侵入した細菌やウイルスなどの異物を排除する役割を担う物質です。体を病気から守る重要な物質ですが、花粉やハウスダストなどの物質を異物と判断してしまい、過剰に反応することがあります。その結果、鼻の粘膜に炎症が起こり、アレルギー性鼻炎の症状が現れます。

アレルギー性鼻炎の原因

通年性アレルギー性鼻炎と季節性アレルギー性鼻炎は、それぞれ主な原因物質が異なります。ここでは、通年性アレルギー性鼻炎と季節性アレルギー性鼻炎、それぞれの原因物質について解説します。

通年性アレルギー性鼻炎の原因

通年性アレルギー性鼻炎の主な原因は、ハウスダストです。ハウスダストとは微小なホコリのことで、下記のようなものが含まれます。

  • ダニのフンや死骸
  • ゴキブリのフンや死骸
  • イヌやネコなど、ペットの毛やフケ
  • 人間のフケ
  • 服などの繊維のクズ
  • カビ

など

また、排気ガスや喫煙、食生活の乱れ、病気などがアレルギー性鼻炎の要因になる場合もあるとされています。

季節性アレルギー性鼻炎の原因

季節性アレルギー性鼻炎の主な原因は花粉です。春ごろに飛散するスギ花粉やヒノキ花粉が原因であることが多いですが、そのほかにも季節ごとにいろいろな花粉が飛んでおり、それらが原因になる場合もあります。

  • スギ:2~4月
  • ヒノキ:3~5月
  • イネ科:4~10月
  • ブタクサ:8~10月
  • セイダカアワダチソウ:10~12月 など

アレルギー性鼻炎と風邪の違い

アレルギー性鼻炎と風邪は、どちらも鼻水や鼻づまり、くしゃみなど似たような症状が出るため見分けにくいです。しかし、アレルギー性鼻炎と風邪では、原因が明確に異なります。

アレルギー性鼻炎の原因は、ハウスダストや花粉などです。一方、風邪はウイルスや菌に感染することで発症します。また、症状が異なるケースもあります。アレルギー性鼻炎の場合は目のかゆみなどの症状が出ることがありますが、風邪が原因で目がかゆくなることはまずありません。

なお、アレルギー性鼻炎と風邪は別物ですが、アレルギー性鼻炎によって口呼吸が増えたことが原因で、風邪をひきやすくなる可能性はあります。

アレルギー性鼻炎の診断

アレルギー性鼻炎の診断方法は、問診と血液検査が一般的です。それぞれどのようなことを行うのか、詳細を解説します。

問診

まずは問診により、鼻づまりや鼻水といった症状、家や職場の環境、他のアレルギーの有無、家族のアレルギーの有無などを確認します。これらの情報だけで診断を行い、治療を開始することも多いですが、必要に応じて詳細な検査を行います。

なお、鼻や喉の観察には専用の器具が必要となるため、当院では対応できません。これらの診察を希望する方は耳鼻科を受診しましょう。

血液検査

血液検査では、アレルギーに関連性の深い好酸球やIgEなどを測定します。好酸球とは、主に寄生虫と戦う役割を担う白血球の一種です。アレルギー反応による炎症に関係しているとされており、アレルギーが起きている部位に多く見られます。

そしてIgEとは、アレルゲンを認識して結合することで、くしゃみや鼻水などの生体反応を引き起こし、アレルゲンを体外に排出する役割をもつ抗体です。IgEが多いと生体反応が強く出るため、「血中のIgE濃度が高い=アレルギーを起こしやすい」といえます。

また、特異的IgE抗体というものを調べることによって、原因物質を見つけられることもあります。特異的IgE抗体とは、特定のアレルゲンに反応するIgEのことです。測定可能な特異的IgE抗体は200種類以上あり、保険診療の場合は1度の検査で測定できる数に上限が設けられています。

すべての原因物質を検査するのは難しく、問診の内容から疑わしいと考えられる物質や、一般的に原因になることが多いものを検査します。

皮膚プリックテスト

皮膚プリックテストとは、アレルゲンが含まれた液体を肌の上に乗せ、プリックテスト専用の針で刺してアレルゲンを体内に入れる検査です。

刺した箇所に現れた膨疹(皮膚が赤く盛り上がった状態)の大きさによって、IgE抗体の有無をチェックします。

アレルギー性鼻炎の治療法

アレルギー性鼻炎をはじめとするアレルギー性の疾患は、一度発症してしまうと原因物質が身近にある限りは症状が続いてしまいます。そのため、生活の工夫で原因物質を遠ざけることが重要です。

ただし、原因物質を回避したからといって、アレルギー性鼻炎が自然に治る可能性は低いとされています。放置するとつらい症状が出るだけでなく、生活の質も下がるため、早めの治療を検討しましょう。アレルギー性鼻炎の主な治療法は下記の3種類です。

  • 薬物療法
  • アレルゲン免疫療法
  • 手術療法

それぞれどのような治療法なのか、特徴を解説します。

薬物療法

アレルギー性鼻炎の症状を抑えるお薬を投与する治療法です。一般的には、くしゃみや鼻水には抗ヒスタミン薬、鼻づまりには抗ロイコトリエン薬という内服薬を用います。また、症状が強い場合には、点鼻ステロイド薬という鼻に直接薬を噴射するものを使用することもあります。

  • 抗ヒスタミン薬:かゆみや腫れなどの症状を引き起こす「ヒスタミン」という物質の働きを抑えるお薬
  • ロイコトリエン受容体拮抗薬:気管支を収縮させたり、鼻づまりを引き起こしたりする「ロイコトリエン」の働きを阻害し、気管支を拡張したり鼻づまりを緩和したりする作用をもつお薬
  • 点鼻ステロイド薬:抗炎症・抗アレルギーなどの作用をもち、くしゃみや鼻づまりなどの症状を抑えるお薬

なお、抗ヒスタミン薬は服用後に眠気が出ることが多いのですが、最近は眠気が出にくいお薬も登場しています。仕事や車の運転などをする予定があり、眠気が出ると困る方は、医師に相談してみましょう。

アレルゲン免疫療法

アレルゲン免疫療法とは、原因物質を少量体内に投与し、身体を原因物質に慣らすことで、原因物質に対する免疫を抑え、症状を和らげる治療方法です。薬物療法で用いたお薬の副作用が強く出たとき、あるいは薬物療法では効果が不十分なときに検討されます。

注射による投与のほか、お薬を舌の下に入れて飲み込まずにそのまま溶かして服用する舌下投与という方法もあります。

減感作療法(皮下免疫療法)

注射製剤を使う方法は「減感作療法(皮下免疫療法)」と呼ばれます。低濃度のアレルゲンの抽出液を注射し、少しずつ濃度を上げていって、アレルゲンに対抗するための免疫を獲得させる方法です。季節性アレルギー性鼻炎の場合、花粉の飛散量が増える3ヶ月前ごろから治療を開始し、2年以上継続する必要があります。

舌下免疫療法

舌下製剤を使う方法は「舌下免疫療法」と呼ばれます。お薬に含まれるアレルゲンの量を少しずつ増やしていって身体を慣らす点は、減感作療法と共通しています。減感作療法と大きく異なる点は、お薬の摂取方法です。

お薬の摂取は1日1回、舌下にお薬を入れて1~2分ほど待ってから飲み込みます。服用後、5分間は飲食やうがいができません。さらに服用から2時間は運動や入浴、飲酒を控える必要があります。

治療期間は3~5年と長く、かなり根気のいる治療法ではありますが、アナフィラキシーショックが起こるリスクが少ないのがメリットです。また、薬物療法で使用するお薬よりも高い効果が期待できるとされています。スギ花粉とダニの舌下製剤については、保険が適用されます。

手術療法

薬物療法で思うような効果が得られない場合は、手術療法が検討されることもあります。手術の方法としては、下記のようなものが挙げられます。

  • 下鼻甲介粘膜焼灼術(かびこうかいねんまくしょうしゃくじゅつ):レーザーで鼻の粘膜を凝固させる方法
  • 鼻腔形態改善手術:鼻の粘膜のボリュームを減らすなど、鼻の構造を変えて症状を出にくくする方法 など

手術したからといって、アレルギー性鼻炎が完治するとは言い切れません。しかし、アレルギー反応を抑制するなどの効果が期待できます。

アレルギー性鼻炎の予防法・対処法

アレルギー性鼻炎を予防したい、または症状を和らげたい場合は、生活習慣を変えてアレルゲンに触れないようにすることも大切です。ここでは、アレルギー性鼻炎の予防法・対処法を紹介します。

通年性アレルギー性鼻炎の場合

通年性アレルギー性鼻炎では、原因物質に応じて以下のような対策を行います。

  • カーペットや寝具の掃除や乾燥
  • 布団や枕カバーの交換(防ダニやホコリを通さないもの)
  • 部屋、エアコンのフィルターなどの掃除
  • ペットと住環境を分ける

鼻を洗浄し、内部に入り込んだホコリを洗い流すのも効果的です。洗浄の際には、市販の生理食塩水を使うことをおすすめします。水道水は塩素などが含まれており、鼻の粘膜がダメージを受けてしまうので使用しないようにしましょう。

何度も鼻をかむと鼻の粘膜が荒れやすくなるので、保湿ティッシュを使うのもおすすめです。それでも鼻をかみすぎて粘膜が荒れてしまった場合は、白色ワセリンなどを塗って粘膜を保護しましょう。

また、室内が乾燥していると鼻の粘膜の機能が落ちやすくなるので、加湿器などで湿度を上げるのも効果的です。

季節性アレルギー性鼻炎の場合

季節性アレルギー性鼻炎では、以下のような対策を行います。

  • 花粉情報に注意し、飛散が多い日・時間には外出を控える
  • 外出時にはメガネやマスクを着用する
  • 窓を閉める、上着を玄関で脱ぐなど、室内に花粉を持ち込まない
  • 空気清浄機やフィルター付きエアコンを使う

通年性アレルギー性鼻炎と同じく、鼻洗浄をする、粘膜を白色ワセリンで保護するなどの対策も有効です。

アレルギー性鼻炎のQ&A

ここでは、アレルギー性鼻炎のよくある質問に回答します。

赤ちゃんもアレルギー性鼻炎になることはある?

季節性アレルギー性鼻炎になる赤ちゃんは少ないですが、通年性アレルギー性鼻炎になる赤ちゃんはいます。1歳6ヶ月児健診を受けた赤ちゃんの1.5%が通年性アレルギー性鼻炎という報告もあるため、部屋をこまめに掃除するなどして予防に努めましょう。

子どもがいつも鼻をすすっているのはアレルギー性鼻炎が原因?

長く症状が続いている場合は、アレルギー性鼻炎の可能性があります。赤ちゃんが季節性アレルギー性鼻炎になることは少ないですが、1~2歳ごろに発症する子どもはいます。幼児期~学童期に発症する子どもは、さらに増えるとされています。

アレルギー性鼻炎では水のような鼻水が出ることが多いですが、子どもの場合はねばついた鼻水が出ることもあります。自分で判断するのは難しいので、医療機関を受診してみましょう。

アレルギー性鼻炎の治療はクリニックフォアのアレルギー科へ

アレルギー性鼻炎は、花粉症の多い日本ではよく知られた疾患であり、市販薬での対処も可能です。それでも症状が強い場合や、原因を特定したい場合、長期的に症状を抑える治療を検討したい場合などは、お気軽にクリニックフォアグループへ一度ご相談下さい。

クリニックフォアなら、オンライン診療で花粉症や舌下免疫療法(※舌下免疫の初回治療は必ず対面受診が必要です)のお薬を受け取ることも可能です。忙しくてなかなか受診できない方も、お気軽にお問い合わせください。

※医師の判断によりお薬を処方できない場合があります。
※効果・効能・副作用の現れ方は個人差がございます。医師の診察をうけ、診断された適切な治療方法をお守りください。

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