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喘息は咳や息苦しさなどを主な症状とする病気で、発作によって日常生活に支障が出ることもあります。本記事では、喘息がどのような病気なのかや、発症する原因、予防法、治療法、検査方法などについて解説します。
喘息とは?
喘息とは、気管という空気の通り道で繰り返し炎症が起きることで、気管が狭くなってしまい、咳や痰が出やすくなったり、息苦しくなったりする病気です。軽症のことも少なくありませんが、薬で気道を広げるなどの適切な処置が行われないと命にかかわる重症なものであることもあります。自己判断は避け、医療機関に相談することが大切です。
もう少し具体的に見ていきましょう。
咳や息苦しさなどの症状が引き起こされる
喘息の特徴的な症状は、発作的に起こる息苦しさや咳、痰、胸の苦しさなどです。息をするたびにぜーぜー、ひゅーひゅーという音が聞こえる(喘鳴)こともあります。重症になると、気道が狭くなり、痰がつまったりすることで、十分な酸素を得ることができなくなります。
喘息時に起こりやすい症状
- 呼吸困難
- 発作性の激しい咳、痰
- 空咳
- 動悸、息切れ
- 喘鳴(ぜーぜー、ひゅーひゅー)
ただし、喘鳴のない咳や痰のみの喘息もあるため、風邪と間違わないように注意が必要です。
また、症状が起こりやすいタイミングにも特徴があります。
- 夜間〜早朝にかけて
- 気温差が激しい季節の変わり⽬など
- 天気が不安定で変動しやすいとき
- 疲労があるとき
- ⾵邪をひいているとき
- 発作を誘因する刺激物に接触したとき(タバコの煙、強い臭いなど)
喘息の重症度は4段階
喘息は症状に応じて4つの段階(重症度・タイプ)に分類されます。それぞれの症状の頻度や重さは以下の通りです。
重症度・タイプ | 軽症間欠型 | 軽症持続型 | 中等症持続型 | 重症持続型 |
症状が起こる頻度 | 週1回未満 | 週1回以上かつ毎日ではない | 毎日 | 毎日 |
症状の重さ | 軽度 | 月1回以上、睡眠や日常生活が困難なことがある | 週1回以上、睡眠や日常生活が困難なことがあり、ほとんど毎日短時間作用性吸入β2刺激薬が必要 | 日常生活に制限があり、治療をしていてもしばしば悪化する |
夜間の症状の頻度 | 月に2回未満 | 月2回以上 | 週1回以上 | しばしば |
気道が慢性的に炎症を起こしている
喘息は、空気の通り道である気道が炎症を起こすことで始まり、発作が起こっていないときでも炎症は続いています。
このような状況では、気道内の粘膜が刺激に対して敏感になっています。気道は筋肉でできており、わずかでも刺激を受けると、刺激によって筋肉が収縮してしまうため、空気が通りにくくなって発作が起こってしまうのです。
なお、喘息発作には以下のような受容体がかかわっています。
- ベータアドレナリン受容体:アドレナリンという神経伝達物質に反応して気道の筋肉をゆるめ、空気を通りやすくする
- アセチルコリン受容体:アセチルコリンという神経伝達物質に反応して気道の筋肉を収縮させ、空気を通りにくくする
風邪や運動、タバコ、気温や気圧の変化、アレルギーを起こす物質などは、アセチルコリンの分泌を高めるとされています。そのため、後述するアレルゲンに接触することで喘息症状を引き起こすこともあります。
<h3>喘息は鼻やアレルギーの病気を合併しやすい
喘息の方は、次のような鼻やアレルギーの病気も併発していることが少なくありません。
- アレルギー性鼻炎
- 慢性副鼻腔炎
- 好酸球性副鼻腔炎
- 好酸球性中耳炎
これらの病気は、空気の通り道となっている鼻から気管支にかけてつながっている気道の中で発症するため、喘息と合併しやすい傾向があります。また、喘息の方はアレルギー体質であることも多く、アレルギー性鼻炎のようなアレルギー由来の病気を併発していることも珍しくありません。
喘息になる原因
子どもの時に発症した喘息の場合、ほとんどの原因はアレルギーであると考えられています。具体的には、ダニやホコリなどのハウスダスト、花粉やカビ、薬、アルコール、タバコなどに対するアレルギーです。また、喘息のある人は、運動も、気管を刺激するために、喘息の発作を誘発することが少なくありません。
一方で、大人になって発症した喘息の原因ははっきりしないことも多く、さまざまな誘因が考えられます。考えられる原因には以下のようなものがあります。
アレルゲン
アレルゲン(アレルギーの原因となる物質)には次のようなものがあります。
- ダニ
- ハウスダスト
- ペット
- 花粉
- 食物
など
これらが体内に入ると、喘息を引き起こす化学物質が放出されることがあります。
刺激
以下のような刺激によって気道が収縮し、喘息発作を起こすことがあります。
- たばこ
- 過労・ストレス
- 大気汚染
- 天候・気温の変化による冷たい空気
- 香水などの匂い
など
お薬(アスピリン)
くわしいメカニズムなどは不明ですが、アスピリンもしくはアスピリンと同じ作用を持つお薬によって起こる喘息発作を「アスピリン喘息」と呼んでいます。アスピリンは解熱剤や鎮痛剤として使われるお薬です。飲み薬だけでなく、塗り薬や湿布などにも使われます。
運動
運動をすることで喘息発作を起こすこともあります。このタイプの喘息は「運動誘発性喘息」と呼ばれており、運動によって大量の乾燥した冷たい空気を吸い込むことで気道が冷却・乾燥し、喘息発作が起こると考えられています。準備運動やマスクの着用が予防につながります。
感染症による炎症から移行する場合も
感染症が引き金となって発症する喘息もあります。原因となる感染症には多くのものがありますが、代表的な感染症は以下の通りです。
- ウイルス性呼吸器感染症
- 風邪
- 気管支炎
- 肺炎 など
これらによる喘息症状は短期間で治ることもありますが、重症化して治療が必要となるケースもあります。
また、咳が長く続く場合は「咳喘息」が疑われます。咳喘息は喘息とよく似ていますが、喘鳴や痰などの症状がないのが特徴です。感染症がきっかけとなることがあり、感染症が治っても長期間咳が続く場合は咳喘息の恐れがあります。症状が重い場合や長引く場合は医療機関を受診するとよいでしょう。
喘息症状を防ぐための予防法
喘息を防ぐために、日常生活でできることもあります。
刺激となる物質を吸い込まないようにする
喘息の原因となっている物質を特定し、遠ざけることが予防に効果的です。ダニやほこりが原因であれば、こまめに掃除をしたり、じゅうたんを使わないようにしたりすることで予防しやすくなりますし、冷たい空気が原因であれば、マスクを着用することで乾燥した冷たい空気を吸い込むのを防ぐことができます。
生活習慣を改善する
生活習慣も喘息に影響するため、以下のようなことに注意しましょう。
ストレスをためない
ストレスによって喘息を誘発したり悪化したりすることもあるため、日ごろからストレスをためないことが大切です。
禁煙する
タバコは気道に刺激を与え、炎症を悪化させます。
しっかり睡眠を取る
睡眠不足になると、アレルゲンに対して敏感になったり、風邪をひきやすくなったりします。
運動をする
運動は、肥満予防や身体機能の維持に役立ちます。ただし、運動によって喘息が誘発されるケースもあるため、運動は慎重に行う必要があります。主治医と相談して運動内容を決めるとよいでしょう。
肥満を改善する
肥満と喘息は密接な関係にあります。気道の中には肥満細胞があり、アレルゲンが肥満細胞と結合したり、ストレスがたまったりすると、喘息を起こす物質が肥満細胞から放出されるからです。
したがって、減量することが喘息の症状の軽減やリスクの回避に効果的です。
喘息の状態を把握することも大事
喘息の状態を把握するには、「ピークフローメーター」という器具を使うのが便利です。ピークフローメーターは、息を思い切り吐き出した時の最大速度を測り、数字でその時の喘息の状態を客観的に把握できるようにするものです。
数値が低くなると喘息発作が起きやすいとされており、毎日複数回記録することで、発作が起こりやすい状態かどうかがわかるようになります。
喘息の治療方法
喘息の治療において最も大切なことは、息苦しさの発作が起きないようにコントロールすることです。発作を繰り返していると、気管の炎症が進行し、治療が難しくなります。ですので、発作を予防する長期管理薬(コントローラ―といいます)を基本として、発作が起きてしまった時には発作治療薬(レリーバー)を使用します。
長期管理薬
長期管理薬は、重症度によって用いる薬の種類や量は異なりますが、食道の炎症を抑える作用のある吸入ステロイド薬の処方が基本となります。また、症状や発作の頻度に応じて気管支を広げる効果が長く続く「長時間作用性β2刺激薬」と吸入ステロイド薬を一緒にしたお薬が処方されることもあります。
症状が無くても治療を続けることが大切で、治療をやめてしまうと、再び発症することも少なくありません。治療を終えていいのか、医師と相談するようにしましょう。。
吸入ステロイドと一緒に処方される長期管理薬には以下のようなものがあります。
- 長時間作用性β2刺激薬
- 長時間作用性抗コリン薬
- ロイコトリエン受容体拮抗薬
発作治療薬
発作が起きた時に使用する発作治療薬には、次のようなものがあります。
- テオフィリン徐放薬(炎症を抑え、気道を広げる)
- 短時間作⽤性吸⼊β2刺激薬(気道を広げる)
- 経⼝ステロイド薬(炎症を抑える)
- 抗コリン薬(気道を広げる)
軽度の発作には、β2刺激薬を吸入し、効果が不十分な時には追加で吸入します。それでも症状が改善しなかったり、何度も必要になる場合には、ただちに救急外来を受診してください。また、中等度(苦しくて横になれない、かろうじて歩行できる)以上の場合にも、ただちに救急外来を受診してください。
子どもの喘息の場合、軽症のことが多く、約7割は自然に良くなっていきます。残りの3割では、大人になっても薬の吸入が必要になります。また、大人になってから発症した喘息の場合、重症のことも少なくなく、薬の吸入を続ける必要があることが多いです。しかし、喘息は放っておくと命に関わる病気ではありますが、適切に治療を行うことによって症状を抑えることができます。
喘息の検査方法
喘息症状が疑われる場合は呼吸器内科かアレルギー科を受診するとよいでしょう。
まず問診によって、息苦しさの有無、症状が出るタイミング、症状が繰り返し起きているか、などについて詳しくお伺いします。その上で、喘息が疑われ医師が必要と判断した場合には、以下のような検査を行います。
呼気NO検査
機械に息を吹き込んで、息の中の一酸化窒素(NO)濃度を測定する検査です。数値が上昇していれば気道が炎症を起こしていることを示し、数値によって気道の炎症の程度を知ることもできます。
呼吸機能検査(スパイロメトリー)
息を思いっきり吸ったり吐いたりしてもらうことで、肺活量や息を吐く強さを計測します。それらの値が喘息のパターンに当てはまるか、他の病気の可能性がないか、確認します。検査の際には他の医療機関で検査を受けていただきます。
血液検査
喘息の場合、白血球が増加し、特にアレルギーの場合は好酸球という細胞が増加します。そのため、アレルギーがあると数値が高くなる好酸球数を調べます。また、喘息と同様の症状が出る感染症を調べることもあります。
アレルギー検査
血液検査で特異的IgEというものを調べることで、喘息の原因となるアレルギーがないかを調べます。また、アレルギー体質やアレルギーの程度を調べる総IgE値検査が行われることもあります。
胸部レントゲン検査
胸のレントゲン画像を撮影します。息苦しさや咳の原因になる他の病気の可能性がないか、肺炎などの合併症がないかなどを確認します。
その他の検査
咳や息苦しさなどを引き起こす病気は喘息以外にもあります。そのため、他の病気と合併していないか、ほかの病気ではないか、といったことを確認するために、胸部CT検査、気管支鏡検査、心電図検査、心エコー検査などが行われることもあります。
喘息の治療はクリニックフォアのアレルギー科へ
喘息は放っておくと命を落としかねない病気です。しかし、適切な治療を受けることによってコントロールをすることが可能です。
クリニックフォアでは、対面診療のアレルギー科で喘息治療を行っています。喘息と疑われる症状がある場合は、クリニックフォアグループにご相談下さい。