鼻づまりは多くの方が経験する症状ですが、その原因は多岐にわたります。
鼻づまりとは
鼻づまりとは、片鼻、もしくは両鼻が鼻水や異物、腫れた粘膜などによって詰まってしまうことにより、不快感や息苦しさを感じる状態のことです。鼻水や鼻血、咳や痰、いびきなどを伴うこともあります。
鼻の空気の通り道が狭くなっている状態
鼻づまりは医学用語で「鼻閉」といい、鼻が塞がって閉じてしまったかのように息をしにくい状態になることをいいます。
本来、人間は鼻から呼吸をするようになっていますが、鼻の中が腫れたり異物が詰まったりして鼻の空気の通り道が狭くなると、鼻からの呼吸がしにくくなるばかりでなく、さまざまな鼻づまりの症状を訴えるようになります。
鼻づまりのよくある症状
鼻づまりのときに、下記のように他の症状を伴うこともあります。
- 青く濃度の高い鼻水が出る
- 鼻水が喉に回る
- 痰や咳を伴う
- 鼻血を伴う
なお、片方だけに鼻づまりが起き、左右交互につまる場合は、「ネーザルサイクル」の可能性があります。ネーザルサイクルとは、自律神経の働きによって左右の鼻が交互につまる生理現象のことです。
自律神経によって左右どちらかの交感神経の働きが優位になると、優位になった側の鼻の粘膜が縮小して空気がたくさん通るようになり、もう片方の鼻は詰まりやすくなります。
自律神経は数時間おきに左右交互に働いているため、数時間おきに片方だけ鼻づまりが起こってしまうというわけです。このような鼻づまりは病的なものではないため、あまり心配しなくてもよいでしょう。
鼻づまりが起こる原因
鼻づまりは、鼻腔の中の空気の通り道が塞がれて起こる症状で、その原因にはさまざまなものがあります。
鼻腔粘膜が腫れている
鼻腔の粘膜が腫れると、空気が通りにくくなります。粘膜が腫れてしまう原因として考えられるものには、次のものがあります。
点鼻液の使用による腫れ
鼻づまりの点鼻薬のなかには、血管を収縮させる成分が入っていることが一般的です。血管を収縮させることで鼻腔粘膜の腫れを抑える効果が期待できますが、お薬の効果が切れるとまた鼻腔粘膜が腫れてきます。
このような血管を収縮させる点鼻薬を長期間使用するとだんだんとお薬が効かなくなったり、かえって鼻の粘膜が厚くなったりして、薬剤性鼻炎という状態になることもあります。
血行不良による腫れ
鼻の粘膜には毛細血管が張り巡らされています。血管内の血流が滞ると粘膜が腫れてしまい、空気が通りにくくなります。
乾燥による腫れ
鼻の穴の中は、鼻水によって適度な湿度が保たれています。ところが鼻水が出にくくなって乾燥すると、粘膜が腫れて鼻づまりを起こしやすくなります。
アレルギーによる腫れ
アレルギーの原因物質が侵入するとヒスタミンという化学物質が放出されて、血管が広がり、鼻の粘膜が腫れます。例えば花粉症の鼻づまりはこちらに該当します。
鼻水がたまっている
鼻水は鼻の中の湿度を保つ役割をしていますが、鼻腔内に停滞して溜まると、鼻の粘膜が塞がれて鼻づまりを引き起こしやすくなります。
鼻腔にできものができている
鼻腔にできるできものには、次のようなものがあります。
- 鼻茸:鼻の粘膜が腫れてやわらかいポリープとなったもの
- 乳頭腫:鼻の粘膜にできる腫瘍のひとつ。ほとんどは良性腫瘍で、ヒトパピローマウイルスが関係している可能性があるという説もある
- 血管腫:鼻の血管の細胞が増殖してできる良性腫瘍のひとつ。大きくなると骨を破壊したり、頭蓋内に広がったりすることもある
鼻腔に異物が入っている
ティッシュなどの異物が鼻の中に入ったままになっていると、炎症を起こして鼻づまりを起こすことがあります。また、特に子供の場合は、食べ物や子どものおもちゃなどの異物が原因となることもあります。
鼻咽喉の腫れ
鼻咽喉とは、鼻からのどにかけての器官のことです。炎症などによって鼻の中の粘膜が腫れ、粘膜が鼻の穴を塞いでしまう場合もありますが、鼻咽喉が腫れた場合は、細菌やウイルスによって鼻やのどが腫れたり、腫瘍が空気の通り道を塞いだりして鼻づまりを起こすことがあります。
軟骨や鼻の骨の異常
鼻の中にある骨や軟骨が湾曲していたり、肥大化したりしていると、鼻の中に空気が流れにくくなります。後述する鼻中隔湾曲症がこちらに該当します。
鼻づまりの症状が現れる病気
鼻づまりを起こす病気には多くのものが考えられますが、ここでは代表的な病気について紹介します。
風邪(上気道炎)
ウイルスや細菌が鼻やのどに付着し、炎症を起こす感染症です。代表的な症状に、鼻づまりや鼻水などがあります。
アレルギー性鼻炎
花粉などのアレルギーを起こす原因物質によって鼻づまりやくしゃみが引き起こされます。前述の通り、アレルギーの原因物質が侵入するとヒスタミンという化学物質が放出されて、血管が広がり、鼻の粘膜が腫れますし、鼻水も増えるため鼻閉が起こります。
また、鼻を強くかんだり、鼻の中のかさぶたを剥がしたりして鼻出血を伴うこともあります。
副鼻腔炎
副鼻腔とは、鼻の周囲にある空洞のことです。副鼻腔炎は、ウイルスやアレルギーなどが原因で副鼻腔の粘膜に炎症が起こり、膿がたまる病気です。
鼻づまりの症状の他、副鼻腔の中に鼻水がたまると、鼻水がのどに回ることがあります(後鼻漏)。頭痛、顔の痛み、咳や、炎症によって鼻の粘膜が傷つくことで鼻血を伴うこともあります。
鼻茸
鼻の中の粘膜に水ぶくれのようなやわらかい腫瘍ができて、ポリープを形成する病気です。鼻茸によって鼻の穴が塞がれるため、片方(鼻茸がある側)だけに鼻づまりが起こりやすくなります。
アデノイド
アデノイドは、鼻の奥にあるリンパ組織のことで、ウイルスなどから体を守るフィルターのような役割をしています。幼児期に一時的に大きくなってから縮小するのが一般的ですが、その後なんらかの原因で肥大化すると、鼻づまりや中耳炎などを引き起こすことがあります。一般的には良性腫瘍と考えられています。
鼻中隔湾曲症
鼻中隔は、左右の鼻の穴の間にある壁のような軟骨のことです。この部分が湾曲していると、左右で空気の通り方が異なるため、鼻づまりのように感じることがあります。また、左右が交互に鼻詰まりになるのも鼻中隔湾曲症の特徴のひとつです。
悪性腫瘍
多くはありませんが、鼻や副鼻腔に悪性腫瘍ができた場合も、鼻づまりや鼻血などの症状を認めることがあります。
鼻づまりの治療法
鼻づまりの治療は、鼻づまりの原因となっている病気への治療が行われます。それぞれにどのような治療法があるのかを見てみましょう。
内服薬
アレルギー性鼻炎が原因となっている場合は、アレルギーの治療薬である抗ヒスタミン薬(アレルギーを抑える)、抗ロイコトリエン薬(鼻や気道の炎症を抑える)や抗トロンボキサンA2薬(くしゃみ、鼻水などを緩和する)などを内服します。
風邪による鼻づまりの場合も、抗ヒスタミン薬が処方されるケースが多いです。
また、副鼻腔炎の場合は、解熱鎮痛薬などの抗炎症薬などで炎症を抑えたり、発熱などを伴う場合には炎症の原因となる菌を殺菌する抗生物質を用います。鼻づまりの症状を抑えるためには、アレルギー性鼻炎と同じように抗ロイコトリエン薬などを使います。
鼻茸に対しても、まずは抗炎症薬で炎症をしずめ、ポリープの縮小を試みます。
点鼻薬
点鼻薬とは、鼻に直接差し込み、薬剤を噴霧するタイプのお薬のことです。点鼻薬には、炎症を抑えて鼻腔の腫れを抑える成分が入っているものが多く、鼻づまりの改善に使うことが多いです。
アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、鼻茸などの場合は、炎症を抑えるためにステロイドの点鼻薬を使います。鼻水の症状が強い場合には、血管を収縮させる成分が入っている点鼻薬をつかうこともありますが、前述のように薬剤性鼻炎への注意が必要です。
ネブライザー
ネブライザーとは、薬剤を霧状にして鼻腔内に行き渡らせる器械のことです。アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎の場合は、ネブライザーを使って鼻の中にステロイドや抗ヒスタミン薬を吸入し、炎症をやわらげる治療が行われることがあります。
手術
お薬による治療で効果が期待できない場合は、手術をすることもあります。手術は、病気の種類によってさまざまな方法があります。
- 鼻茸:粘膜にできたポリープを切除します。
- 鼻中隔弯曲症:鼻づまりの原因となっている軟骨を取り除いたり形を整えたりして、空気の通りをよくします。
- 副鼻腔:内視鏡を用いて粘膜やポリープを取り除き、たまった鼻水などを洗浄する「鼻内副鼻腔手術」、下鼻甲介(鼻の中にあるひだのようなもの)にレーザー光線をあてて粘膜の腫れをやわらげる「鼻粘膜焼灼」、下鼻甲介の骨を切除して空気の通りをよくする「粘膜下鼻甲介骨切除」などがあります。
- アレルギー性鼻炎:レーザーで粘膜を縮小する「鼻腔粘膜焼灼術」、アレルギー反応に関与する神経の過敏性を抑える「後鼻神経凍結手術」、アレルギー反応を伝える神経を切断する「後鼻神経切断術」、粘膜の奥にある下鼻甲介の骨を削る「粘膜下下鼻甲介骨切除術」などがあります。
- アデノイド:全身麻酔をかけて、口の中から肥大したアデノイドを切除します。
鼻づまりの解消法
鼻づまりになってしまったときは、自分でできる対処法もあります。受診が難しい場合や、症状が軽い場合は試してみてもよいでしょう。
鼻洗浄(鼻うがい)をする
鼻水で鼻がつまっている場合は、鼻の穴の中に専用の洗浄液か生理食塩水を流し込んで、鼻の奥にたまった粘り気のある鼻水を洗い流し、鼻の通りをよくしましょう。
花粉・ハウスダストなどのアレルゲン、細菌などを洗い流す効果も期待できます。
鼻を温める
鼻を温めると、血行がよくなって鼻づまりが改善することがあります。電子レンジなどで作ったおしぼりを鼻の付け根にあてると簡単に鼻を温められます。
体を温める
体全体を温めると血行が促進されて鼻が通りやすくなります。室内の温度を高くしたり、太い血管が通っている部分を重ね着で温めたり、入浴したりすると効果的です。
加湿する
乾燥は、鼻水が増えるなどして鼻づまりの原因となりえます。そのため、加湿器などを使って室内の湿度を高めましょう。
鼻水を吸い取る
市販されている鼻吸い器などを使って鼻水を吸い取ると、呼吸しやすくなります。
脇の下を刺激する
脇の下には、交感神経を刺激するポイントがあります。小さなボールを使って、右の鼻が詰まっている時は左の脇、左の鼻が詰まっている時は右の脇の下を軽く圧迫すると、血管が収縮して鼻づまりが改善されることがあります。
運動する
運動には、自律神経を整えたり、血管を収縮させたりする効果が期待できます。免疫力を高めるためにも、日ごろから運動習慣をつけることをおすすめします。
ただし、鼻づまり以外にも症状があるなど、体調がよくないと感じるときは無理は禁物です。
お酒を控える
アルコールには血管を広げる作用があります。血管が広がって鼻がつまる原因となるため、鼻づまりが起こっているときは飲酒は避けたほうがよいでしょう。
寝られない時は上半身を高くする
睡眠時に鼻づまりがより気になるようになる方もいるでしょう。これは、仰向けになることで鼻の粘膜の血流が滞り、粘膜が腫れて鼻づまりが起こりやすくなるためです。クッションなどを使って上半身を高くすると、鼻の血流が促されて腫れが引き、空気が通りやすくなります。
市販薬を使用する
風邪やアレルギーの場合は市販薬で対応することも可能です。自分に合ったお薬を選ぶためには、薬剤師や登録販売者に相談するとよいでしょう。
抗アレルギー薬
アレルギーによって発症するアレルギー性鼻炎は、抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬など)で改善できる可能性があります。ただし、お薬の種類によっては眠気を誘発するなどの副作用もあるため、注意が必要です。
なお、鼻づまりをはじめとする鼻症状に効果が期待できる風邪薬も多いですが、そのような風邪薬の中にも抗ヒスタミン成分が配合されていることが多いです。
血管収縮薬
血管の膨張を抑えられれば、粘膜の腫れが和らぎ、鼻の空気が通りやすくなります。血管収縮薬は点鼻薬タイプなど、鼻に直接使用する形状のものが一般的です。
ただし、前述の通り、血管収縮薬を連用していると、鼻づまりがさらに悪化してしまうおそれもあるため、用法・用量をしっかりと守ることが大切です。
鼻の正しいかみ方を意識する
鼻をかむ時は、左右片方ずつ鼻を押さえ、ゆっくり優しくかみましょう。
両方の鼻を一度にかもうとしたり、強くかんだりすると、かえって症状を悪化させてしまうリスクがあるので注意しましょう。
鼻づまりの診察方法
鼻づまりが続くようなら、耳鼻咽喉科や内科、アレルギーの可能性がある場合はアレルギー科などの受診を検討しましょう。医療機関での診察方法には、下記のようなものがあります。
診察
耳鼻咽喉科では機械を用いて、鼻の粘膜の腫れ具合や鼻水の量などの確認をします。鼻中隔が弯曲していたり、鼻茸があったりする場合はこの時点でわかることが多いです。
単純レントゲン撮影
副鼻腔炎が疑われる場合は、レントゲン撮影による検査が一般的です。レントゲンでは、顔の骨の様子や炎症が起きている部位を確認します。症状が重い場合などは、より詳細に観察できるCT検査が行われることもあります。
副鼻腔炎が疑われる場合は、レントゲンで副鼻腔の炎症状態を見ることがあります。
CT検査
CT検査では、炎症を起こしている副鼻腔の部位や程度、鼻中隔の湾曲具合など、鼻の中の様子がわかります。
副鼻腔炎の疑いがある場合は、CT検査によって膿の有無を確認することもできます。
血液検査
アレルギーが疑われる場合は、血液検査を行います。原因がアレルギーなのかどうかや、ダニや花粉などのアレルギーの原因を調べます。
また、慢性副鼻腔炎が疑われる場合は、血液中の好酸球(白血球の一種)の数を調べることで、診断につなげることができます。
鼻づまりのときの受診の目安
以下のような症状がある場合は、お早めのタイミングでお近くのクリニックに受診して下さい。
- 発熱や鼻の周りの痛みや頭痛と伴う
- 鼻づまりがしばらく続いている
- 鼻血を伴う鼻詰まり(耳鼻咽喉科を受診しましょう)
考えられる病気としては、アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、鼻出血、鼻中隔湾曲症、アデノイド、肥厚性鼻炎などがあります。
また、以下のような場合は早急に受診して下さい。状況によっては救急車を利用しましょう。
- 鼻に異物が入ってしまっている
- 鼻が詰まって、呼吸が苦しく、ゼイゼイしている
- 量の多い鼻血が続いている
鼻に異物が入ってしまった場合は、早急に異物を取り除く処置が必要です。また、鼻血が続いている場合は、血液の病気や副鼻腔炎、副鼻腔腫瘍、アデノイド、悪性腫瘍などの可能性も考えられ、放置すると症状が進んでしまうおそれもあります。風邪や鼻炎による鼻づまりだと考えられる場合でも、症状が長引いたり重かったりする場合は受診を検討してください。
鼻詰まりの治療はクリニックフォアのアレルギー科へ
クリニックフォアのアレルギー科では、アレルギーの総合的な治療を行っています。鼻づまりが気になる場合や、花粉症やアレルギーが疑われる場合はぜひお気軽にご相談ください。
※医師の判断によりお薬を処方できない場合があります。
※効果・効能・副作用の現れ方は個人差がございます。医師の診察をうけ、診断された適切な治療方法をお守りください。